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​赤外超解像顕微鏡

分子は赤外光を吸収(赤外吸収)して振動します。振動の仕方は分子の種類で大きく異なるため赤外吸収は「分子の指紋」と呼ばれ、分子の構造や周囲の環境に関する重要な情報を私たちに与えてくれます。

それゆえ、赤外吸収を調べることは学術領域だけでなく、産業界においても分析のために広く活用されています。

しかし、市販の赤外顕微鏡で生体試料を観察すると、空間分解能が10 µm程度と低く、細胞内部の観察はできません。これは、空間分解能が波長に比例する回折限界によって制限されるためです。

波長による分解能の違い

左図:可視光、右図:赤外光、を利用して離れた2点を観察したシミュレーション結果。赤外光は波長が長いため、2点を分離して観察することが出来ない。

そこで、私たちは回折限界を突破した高い空間分解能を有する「赤外超解像顕微鏡」の開発を行いました。

私たちは、赤外と可視の2色を使った2波長レーザー分光法で赤外超解像を実現しています。

私たちの赤外超解像顕微鏡は、市販の赤外顕微鏡では観察不可能であった生体試料内部の微小構造を高い空間分解能で観察することが出来るだけでなく、不均一系から分子配向を含めた規則性を抽出することにも非常に有効であり、生体試料を含めた微小試料観察の新たなツールとして期待しています。

​過渡蛍光検出赤外分光法

赤外分光法は、生体試料の研究にも広く用いられており、例えばタンパク質の二次構造の決定などに利用されています。

生体関連試料の機能を損なうことなく測定するには水溶液中での測定が好ましいです。しかしながら、水は極めて強い赤外吸収を有するので、通常の赤外分光測定では希薄な水溶液中の溶質分子の赤外吸収を得ることは困難です。

​そこで、私たちは赤外超解像原理と過渡吸収検出赤外(TFD-IR)分光法を融合させることで、水溶液中で赤外スペクトル測定可能な新規計測法を開発しました。

水溶液中での赤外分光

(a) TFD-IR分光法の原理。(b,c) ローダミン6Gの過渡蛍光像 (b)可視光のみ、(c)可視光+赤外光。(d).構築したスペクトル 

この手法により、希薄な水溶液中の蛍光分子のみを選択的に赤外スペクトル測定することに成功しました。

​現在では、蛍光タンパク質発色団の構造解析にも取り組んでいます。

時間分解吸収・蛍光分光法

時間分解吸収・蛍光分光法はパルスレーザー照射により生成した、寿命の短い化学種の光吸収または蛍光を観測する手法です。光化学において重要な反応中間体を観測することができ、時間分解計測により中間体濃度の時間変化を観測することで反応速度定数の決定も可能です。

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